3kV級(B種絶縁)電動機の劣化評価技術

電動機固定子コイルの予防保全対策を提案します。

三菱電機製3kV電動機のB種真空加圧含浸コイル絶縁の経年劣化を評価し、予防保全対策を推奨します。

電動機固定子コイルの経年劣化イメージ

特長

  • 特長1
    コイルの素線絶縁の劣化メカニズムを明らかにしました。
  • 特長2
    劣化評価点(EPH)を算出し、予防保全処理内容を推奨します。
    • ※Evaluation Point of High Voltage Insulation

技術内容

高圧電動機の固定子コイル絶縁は主絶縁の劣化による地絡、あるいは素線絶縁(ターン間絶縁)の劣化によるレアショートによってその機能を喪失します。
ここでは、レアショートに至る劣化を評価する手法を提供します。

レアショートに至る劣化イメージ

絶縁試験の結果、コイルの設計指数と運転年数から絶縁の劣化状態を示す評価点(EPH)を求めます。

絶縁特性
絶縁抵抗測定 R
直流吸収試験 PI1、PI2
誘電正接試験 tan δ
交流電流試験 ΔI
部分放電試験(放電開始電圧) Qmax at E/√3
Qmax at E
CSV
静電容量 C
RC特性算定 RC
運転年数 Years

固定子の
設計指数

評価点EPHの算定

EPHの算定値 予防保全推奨内容
EPH<0.25 2年以内に更新orコイル巻替
0.25≦EPH<0.50 2年後に再度絶縁診断・評価
0.50≦EPH<0.75 4年後に再度絶縁診断・評価
0.75≦EPH 6年後に再度絶縁診断・評価

事例

三菱電機製3kV電動機の絶縁劣化評価手法の検証結果

1 容量(kW) 1,460kW/3,000V/1970年製
P 4
測定年 1999健全部 1999吸湿後
EPH 0.07 0.08
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

1999年 29年運転後にレアショート⇒地絡事故発生
評価点EPHは焼損コイルのみを切離した残りの健全部位の絶縁診断結果をもとに算出した。

劣化評価(EPH)結果
EPH=0.07、0.08:2年以内に電動機更新orコイル巻替え
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色が激しく、内部放電による顕著な白化が起こっている。
主絶縁:熱劣化による変色が激しく、素線に接する内面に放電痕が顕著である。
2 容量(kW) 2,100kW/3,300V/1970年製
P 4
測定年 1997現地 2001現地 2003現地
EPH 0.64 0.12 0.08
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2004年 34年運転後にレアショート⇒地絡事故発生

劣化評価(EPH)結果
1997年 EPH=0.64:4年後に再度絶縁診断
2001年 EPH=0.12:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
2003年 EPH=0.08:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
コイルの劣化状況
素線絶縁:写真は焼損したコイルの素線の溶断状況。熱劣化による変色が激しく、白化もかなり発生していたと推定される。
主絶縁:熱劣化による変色が著しい。
3 容量(kW) 400kW/3,300V/1967年製
P 4
測定年 1998現地 2002現地
EPH 0.09 0.06
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2004年 37年運転後の更新にともない調査を実施した。

劣化評価(EPH)結果
1998年 EPH=0.09:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
2002年 EPH=0.06:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色はそれほどでもないが、顕著な白化が起こっている。
主絶縁:熱劣化による変色はそれほどでもないが、素線に接する内面に放電痕が見られる。
4 容量(kW) 850kW/3,300V/1970年製
P 4
測定年 2003現地 2006工場 2006工場洗浄後
EPH 0.07 0.09 0.07
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2006年 36年運転後の更新にともない調査を実施した。

劣化評価(EPH)結果
2003年 EPH=0.07:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
2006年 EPH=0.09:2年以内に電動機更新 or コイル巻替え
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色は中程度であり、白化がところどころに見られるが、中程度のものである。
主絶縁:熱劣化による変色は軽度であり、放電痕の判別は困難である。
5 容量(kW) 150kW/3,300V/1969年製
P 6
測定年 2005工場 2005工場洗浄後
EPH 0.36 0.66
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2005年 36年運転後の更新にともない調査を実施した。

劣化評価(EPH)結果
2005年 EPH=0.36:2年後に再度絶縁診断
ただし、2年後に再診断できない場合は、4年以内に更新or巻替え
2005年 EPH=0.66:4年後に再度絶縁診断
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色が著しいが、白化は全く見られず、ワニスの充填状態も良好である。
主絶縁:熱劣化による変色が著しいが、放電痕は全く見られない。
6 容量(kW) 400kW/3,300V/1970年製
P 4
測定年 2005工場
EPH 0.69
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2005年 35年運転後の更新にともない調査を実施した。

劣化評価(EPH)結果
2005年 EPH=0.69:4年後に再度絶縁診断
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色は中程度であり、若干軽微な白化の兆候が見られる。
主絶縁:熱劣化による変色は中程度であり、放電痕は見られない。
7 容量(kW) 120kW/3,300V/1977年製
P 6
測定年 2005工場 2005工場洗浄後
EPH 0.97 0.95
劣化評価(EPH)結果イメージ
コイルの劣化状況イメージ

2005年 36年運転後の更新にともない調査を実施した。

劣化評価(EPH)結果
2005年 EPH=0.97、0.95:6年後に再度絶縁診断
コイルの劣化状況
素線絶縁:熱劣化による変色は軽度であり、ワニスの残存状況も良好で、白化は全く見られない。
主絶縁:熱劣化による変色は軽微である。

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